エコツアー・ドット・ジェイピー


オランダ留学通信

第18回
動物愛護のNGO & BBCのみなしごクマ

upload:2007.06.13


チャーリーと熊。なんて素敵な関係でしょう。
写真は「Learning to Be Wild :Raising Orphan Grizzlies」より


動物園は洋の東西を問わず人気が高いレジャースポット。その昔、バブル最盛期の頃、連日連夜ハードワークをこなしバリバリ活動していた商社の友人が、「僕は休日にぽっかり時間が空いたとき、動物園に一人で出かけて象やキリンや猿なんかをボーっと眺めるのが好きなんだよね。彼らを見つめていると何より安らげるからさぁ」と語っていたのが今でも印象に残っています。

きっと彼は動物たちの姿の向こうに、遥かなる雄大なサバンナの光景をうっとり思い描いていたのでしょう。でも、そんなことを攻撃的な商社マンからしみじみ語られると、ついつい深読みしてしまって、その友人の姿と檻の中にいる動物の姿が重なって、なんだかとてつもなく気の毒になってしまったのでした(多くの人が憧れる超一流商社にお勤めであっただけに、哀感度もひとしお。ああー・・) 。まあ、動物園にも幅広いファン層がついているということです。

前置きが長くなってしまいました。そうそう今回はオランダの動物園の話です。うちの家から自転車で20分ほどのところにあるレーネンの動物園では、「Bear Forest:訳して<熊の森>プロジェクト」を支援しています。ここの熊コーナーの看板を読むまで全然、気にも留めていませんでしたが、世界のあちらこちらで、サーカスや大道芸あるいは動物園のクマさんたちが迫害を受けているのだそうです。

たとえば、観光客お楽しみアトラクションとして、ガソリンスタンド横や排気ガスたちこめる道路脇のレストランで、掃除もろくにされていない不潔な小さい檻の中に無理やり押し込められている不遇なクマ。あるいは鞭で芸を強制させられたり、はたまた動物園で大きくなりすぎたため手に負えなくなって、安楽死させられそうになったり…命あるものとして尊重されておりません。なかでも「酷い」のが、ショウの最中に暴れだしてお客さんや調教師に危害を加えないように、あらかじめ目玉をくりぬいてしまう例。未だどこかでそんな痛ましいことが行われているのですね。怖い!

そこで、AlertisというオランダのNGOは、気の毒なクマを所有者に交渉して譲り受け、地道に救出しているのです。一方、サポートするレーネンの動物園は2ヘクタールの敷地を用意して、すっかり人間不信になってしまった彼らを受け入れ、せめて余生が健やかで穏やかなものとなるように暖かく見守っています。クマは10頭前後で、ロシア、トルコ、ボスニア、ドイツなどからつれてこられたものだそう。またなるべく自然に近い環境を造成するために、同敷地内に狼の群れを一緒に放って観察。今のところこの方法は成功していて、各方面から注目を浴びているのだとか。

また<熊の森>の前の看板にはそれぞれのクマの名前や経歴、性格などの説明が記載されているため、より身近な存在として感じることができます。親分格のマッケンジーはボスニア紛争時に国連兵士が彼の地で見つけたクマ。飲み屋の見世物として飼われていたようですが、戦時下にあった現地で檻の中にいれられたまま放置されていて、餌をやる人もなく、餓死寸前。

一方、トーリーは動物園にいたものの、その後サーカスに売り飛ばされて、過酷な環境にいたところ兄弟クマ達とともに保護されてオランダへやってきました。彼女は妹のウォルクと一緒に泳ぐのがお気に入り…とまあ、皆それぞれ物語があるわけです。

Alertisは他にも、密猟阻止のため各国政府に働きかけたり、生息地環境破壊防止キャンペーンを実施したり、動物保護と愛護の概念を現地の人に啓蒙したり、人間とクマが共生できるような方法を模索したりと活発な活動をおこなっています。 動物愛護といえば、私も日本で考えさせられた経験があります。

15年くらい前、とある有名な温泉場に出かけたときのこと。夜まで時間があるので、近所を「ちょっと観光」と友人たちとブラブラしていたら、ミニ動物園発見! 早速、時間つぶしに入園したものの、そこには泥と糞にまみれて皮膚病にかかってぐったりしている動物や、やせ細って目も虚ろな動物が檻にいれられて並んでいたのでした。それは目をおおいたくなるくらいひどい状態で、悲惨そのもの。泣きたくなるような光景に、私たち、女性4人、旅のウキウキ気分もふっとび、一同シーン。「抗議しようか?」「でも誰に?」「投書で訴えようか?」「メディアに告発?」などなど意見はとびかったものの、しかし誰一人として次の行動にうつすことはなかったのでした。助けてあげることのできなかった動物さんたち、本当にごめんなさい。

Alertisスタッフがあんな場面を目撃したら、きっと激憤もので、野蛮だとお叱りを受けてしまうでしょう。日本を代表する有名観光地にしては、娯楽アトラクションのレベルがあまりにも低く、驚かされるとともにまことに情けない。トホホ…あれから随分と時が経過しているので、温泉地に似つかわしくないエセ動物園が廃止されていることを祈るのみです。

さてさて、クマ関連にもうひとつお付き合いください。

昨年末、BBCチャンネルで、身無し子の赤ちゃんクマたちを自然に帰そうと試みるドキュメンタリーが放映されました。視聴者の反響が予想以上に大きく、今、静かに旋風が起こりつつあるようです。私の場合、何気なくチャンネルをあわせところ、ちょうどクマの赤ん坊たちがコロコロと草の斜面を転がって遊んでいる場面。小熊たちはとっても愛嬌があって、キャッキャッと歓声が聞こえてきそうな勢い…子供の時に夢中になったディズニーのドキュメンタリー映画を彷彿させ、思わず座り込んで見いってしまいました(個人的なことながら、動物好きといえども、<お涙頂戴>かつ<動物がいかにも演技している映画>はあんまり趣味ではありません) 。

主人公はカナダ人ナチュラリト・チャーリーラッセル(ホームページ[Pacific Rim Grizzly Bears Co-Existence Study])と、彼のパートナーでプロ写真家のモーリーンと身無し子の赤ちゃんクマ、チコ、ロージー、ビスケットの3頭。プロジェクトに選ばれた場所は、日本から近いけど私たちにとっては全くの未知の国のカムチャッカ。湖の向こうに富士山のような火山がそびえるそれは美しい眺めの場所です。人跡未踏のこの地で彼らが過ごす夏は、科学ドキュメンタリーというよりも、ほのぼのとしたメルヘンの世界。

チャーリーは小熊たちに魚とりの仕方を教えたり、野生のクマが近寄ってきて彼らに脅威を与えそうだったときには、勇敢にも体をはり「しっしっ」と追い払って守ったり、まるで親熊そのもの。川べりで釣竿をたれるチャーリーの隣で、ビスケットがプーさんのようにちょこんと座っている姿(リンクはこちら)は二人がおしゃべりに興じているみたいだし、魚が釣れるのを腰まで水につかりながら横に立って待っているチコの姿(リンクはこちら)もほほえましい(クマ君、よだれがたれてまっせ!)。写真集も販売されているのですが、昨日アマゾンを見たらなんと売り切れで中古品にプレミアムがついているみたいでした。ともかく一見の価値在り。リンクをクリックしてみてください。

この番組、NHKあたりが放映権を買って日本でも放送されるかと思っていたら、どうも、映画化される予定がたっているそうで、当面、BBCが権利を握り再放送さえ期待できないようなことがチャーリーのHPには報告されていました(泣)。そして同じく彼のHP情報によると、このたび、カナダのドキュメンタリーフィルムフェスティバルDOXAで600本のエントリー作品の中から晴れてトップバッターに選ばれオープニングを飾るそうです。タイトルは「The Edge of Eden: Living with Grizzlies」。私も番組を何の予備知識もないまま途中から見始めただけなので、再放送に大いに期待していた口。だから、再放送未定の知らせはとっても残念。でも写真集のほうは、後日、偶然アウトドアーショップでみつけ、購入したのでよかった、よかった。なんかちょっと疲れたときに眺めているとほんわりなごむのですよ。

あ! 私も冒頭の商社マンになっていますね。それでは、今回はこのへんで。


▼Alertis
http://www.alertis.nl/
default.asp?language=eng

レーネンの動物園(オランダ語のみ)
http://www.ouwehand.nl/

▼チャーリーラッセルのHP
http://cloudline.org/index.html

フォトギャラリー
http://cloudline.org/photogallery.html

▼カナダのドキュメンタリーフィルムフェスティバル
「doxafestival」
http://www.doxafestival.ca/
festival/edge_of_eden



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マダガスカルのワオキツネザル。いつかCMで横っ飛びしていた動物ってこれでしったけ?

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アフリカ産らしいのですが、名前は不明。オランダ語では Stokpaardje というそうですが、益々なんだかわからない。ライオンキングかマンガのマダガスカルあたりに登場していたような記憶があるような。

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ここでは檻の中にいれられている動物は少数派。レジャー学科では「動物園の歴史的変遷」なんて講義もありました。

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チャーリーとクマの物語「Learning to Be Wild :Raising Orphan Grizzlies」。詳しくはインターネットのリンクをごらんください。カムチャツカといえば日本人はどうしても星野道夫さんを思い出してしまいますね。昨年回顧展に行き感動。ご冥福をお祈りします。
チャーリーラッセルのHP




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クマの森でじゃれる? 二匹

バケツでお遊びするサルは人気者!


日本ではちょっと見ない遊具、鳥の胴体から子供の足がにょっきり。


るりさんは、「Ecozy.com エコツーリズムと持続可能な観光」というWEBサイトの運営者。世界最大産業である観光が、環境、社会、文化、経済に与える影響とはどんなものなのでしょう? 目からうろこですよ!
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*上記サイトは諸般の事情で更新しておりません。最新情報はブログ「ネットで学ぶ身近な観光学」をご覧ください。
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