特集 自然と環境の読書案内

中国の花物語


著者:飯倉照平

出版社:集英社

ISBN:4087201414

価格:777円(税込)

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レビュアー:K

タンポポ、ホオズキ、鳳仙花……。この本に登場するのは、日本の暮らしに溶けこんだ身近な花ばかりだ。そんな花たちを、中国の人々はどのようにとらえ、接してきたのか。エピソードは古今の伝承や文学を中心に、著者自身の見聞もふくめて縦横無尽のゆたかさだ。たとえば、五世紀初めの文人・陶淵明の詩をめぐる重陽節と菊花酒の話、あるいは悲恋の最期をとげた若い男女の墓に生えた赤い花が、鳳仙花になったという民話、あるいは日本に留学した魯迅が、クチナシの鉢植えを郷里に持ちかえったというくだり。著者は、長いこと中国の民話研究に携わってきた文学者だが、その語り口からは無類の花好きであることがうかがえる。
季節の移り変わりとともに語られる四十六の花の名に、子どものころのなつかしい風景や、過ぎし日の思い出を重ねあわせる人も多いだろう。風土こそちがえ、中国と日本の人々の思いを集め、親しまれてきた花たち。二つの国の長いかかわりのなかで、その伝承と文化は深くまじわり、さらには私たちの心の片隅の、きわめて個人的な記憶にもつながっていく。花の力に感じ入る一冊だ。

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